スポーツドライビングにおいて、機械式LSDは、内輪の空転を抑制するといったトラクションパーツの領域を遥かに超え、LSDの「効き方」によって、曲がる/曲がらない、安定する/安定しないといった「クルマの基本的なキャラクターが決定する」とても重要なパーツです。
特に、アクセルON/OFFによりロックする強さが変化することから、FR 機械式 LSDの特性を有効活用するために一番重要な部分は、なんと言っても、
「LSDのロックが、リニアでコントローラブルなこと」
だと、ドラテクマニア 田中ミノルは、考えています。
たとえば、減速を伴うコーナーにおいてドライバーは、
1 アクセルOFF
2 ブレーキング
3 ブレーキング(リリース) + 旋回
4 旋回
5 旋回 + アクセル
といった順序でドライビングします。
この時、クリッピングポイント付近にて、アクセルに足が、ほんの少し乗った瞬間(上記 5 の部分)から、アクセル開度に応じて、どのようにLSDのロックが変化するかにより、クルマのキャラクターが決まります。
仮に、アクセルに足が乗った瞬間、「ガツン」とLSDが ロックするピーキーな特性では、タイヤグリップのほとんどを曲がることに使用している状況で、急激なトラクションがかかることから、一気にタイヤの限界を超え、クルマは挙動を乱してしまいます。
反対に、アクセルを少し踏み込んでも、LSDディスクが滑り、的確にロックが行われない場合は、ドライバーの指示がクルマに伝わらないことから、トラクションをコントロールすることができません。結果、タイヤのグリップも有効に使用することができず、ハイスピードでコーナーを曲がることはできません。
ドラテク的に、一番有効なLSDの効き方、それは、アクセルON(アクセル開度5~20%レベル)にて、優しくロックがはじまり、その後は、アクセル開度に応じてLSDのロック率がリニアに反応してくれること(ドライバーが、アクセルを踏む量で、ロック率をコントロール できること)が理想となります。

このように、ドライバーが意のままにLSDのロックをコントロールできることで、ドラテクと融合し、トラクションパーツとしての領域を超え、コーナリングパーツとしても活用できること、それがLSDを装着する最大のメリットとなります。
また、このリニアなロック特性を実現するためには、イニシャルトルク/カム角といったLSD本体の仕様も重要ですが、実際にLSDディスク間の潤滑性能と増摩擦性能のバランスにより、摩擦抵抗をコントロールしているデフオイルの特性も、非常に重要なファクターだと考えられます。
そして、デフオイルの特性により、ディスク間のクリアランスを均一に保ち、摩擦抵抗がそろっている状況を作り出せれば、非常にコントロール性が向上し、アクセル開度によってリニアにLSDのロック率が反応する仕様となります。
このように、機械式LSD装着車にとって、デフオイルの特性は、ドラテク的にも、とても重要な役割を担っているのです。